腰痛疾患に関する記事

椎間板ヘルニア

2017年9月6日 2017年09月07日 投稿者: oj-youtu

 

椎間板ヘルニアとは?

椎体と椎体の間には椎間板が存在しており、椎間板は中央にゼラチン状の髄核、周囲にはコラーゲンを豊富に含む線維輪から成ります。
椎間板ヘルニアは線維輪から突出した髄核が脊髄神経根を圧迫し、激しい痛みが生じる突出型と繊維輪に亀裂が無く、髄核が繊維輪から飛び出さず、髄核と繊維輪が一緒に膨れる膨隆型があります。

突出型 膨隆型
繊維輪が裂け、そこから髄核が突き出ます。激しい痛みが生じるが短期間で痛みがおさまります。 繊維輪から髄核が飛び出すことがなく、繊維輪は膨れます。突出型に比べて痛みが持続することがあります。

椎間板ヘルニアは頸部、胸部、腰部で発症しますが、中でも多く発症するのは腰部であり、診断を行った際に、”L4/L5”といった言葉が出ることがあります。
この”L4/L5”と言うのは、英語で腰椎はLUMBERと言いますので、腰椎の4番・5番目の間をさします。また、椎間板ヘルニアの発生した場所により、症状や発生する箇所が異なりますので表でまとめさせていただきました。

場所 神経痛の箇所 主な症状
L1-2 大腿神経痛 大腿部の前側・外側に痛みや痺れが発生
L2-3
L3-4
L4-5 坐骨神経痛 臀部から腿の裏や下腿に痛みや痺れ。間欠跛行。長時間の立ちっぱなしが困難
L5-S

ヘルニアとは何?

体内の臓器などが突出または脱出した状態の事をヘルニアと言い、体腔内に入ったヘルニア内へルニア、体腔外にはみ出たものを外へルニアと呼びます。
ヘルニアは椎間板だけにおこるのではなく、椎間板ヘルニア以外に鼠径ヘルニア、臍ヘルニア、頸椎ヘルニアなど他にも多く存在します。
通常であれば、体内の筋肉や膜によって内臓が正しい位置に配置されているのですが、事故や疲労、加齢などによる原因で体を酷使し、その一部が弱ることで、正しい位置からはみ出します。

ぎっくり腰と椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアは症状が似ていることからぎっくり腰と間違えられることがありますが、ぎっくり腰は腰が炎症を起こしているだけですので、数日安静にすれば痛みがおさまることが多いです。
それに対して、椎間板ヘルニアは飛び出した椎間板が安静にしていても勝手に戻ることがない為、筋肉を増強して痛みを抑えるか治療が必要です。

椎間板ヘルニアの症状は?

椎間板ヘルニアは椎間板がはみ出ただけでは、実は痛みの症状は現れることは少なく、自然になくなるまたは元に戻ることもあります。
但し、飛び出した椎間板が神経を圧迫することで坐骨神経痛とも言われる臀部から大腿部、下腿の痛みや痺れが現れます。これはヘルニアが突出している範囲や部位によって異なりますが、主に椎間板がはみ出しやすい場所がL4-5またはL5-S1、といった部分の為、坐骨神経痛と同じ症状が出やすいと言えます。
また、咳やくしゃみだけでも腰部に激しい痛みが生じます。他に感覚が麻痺し、膝や足に力が入らなくなってしまったりする症状が出る事もあり、他の症状として排尿障害と言って尿や便が出にくくなったり、逆に頻尿や失禁がみられることもあります。一般に麻痺や排尿障害の症状が出ている場合は手術が必要な場合が多いため注意が必要です。

椎間板ヘルニアの原因は?

背骨は人の上半身の体重を支えており、起きている間は、立っている、座っているに関わらず、体重がかかり、特に背骨の一番下のある腰に負担がかかることから椎間板ヘルニアになると考えられ、原因として以下のものが考えられます。

加齢による椎間板・骨の老化

椎間板は20歳を過ぎてから、年齢が増すごとに徐々に弾力性がなくなると言われており、弾力性がなくなることで衝撃や圧迫に耐えることができず、髄核が突出または膨隆すると考えられます。
椎間板だけでなく骨も加齢により変性または骨粗しょう症から骨の一部が欠け、その影響から椎間板をつぶしてしまうことが考えられます。

日常生活

背骨に負担がかかることが原因として考えられることが多く、日常生活の中で、
・中腰で重いものを持ち上げる
・ゴルフや野球などのスイングなどの腰を捻った動作
などの動きを繰り返すことが、腰への負担となり、椎間板ヘルニアになると考えられます。


動作だけでなく、日常生活の姿勢が影響して椎間板ヘルニアになる可能性があります。
悪い姿勢で生活すると骨盤がずれやすく、骨盤がずれることで背骨もずれてしまい、背骨がずれると骨盤もずれるといった悪循環から椎間板への負担が大きくなりつぶれて押し出されると考えられます。

椎間板ヘルニアの診断方法

椎間板ヘルニアであるかは画像診断を行うことで分かりますが、但し、椎間板ヘルニアが痛みや痺れになっているかと言うことは画像診断だけではわかりません。画像診断だけでなく、「理学的検査」「神経学的検査」を行い、実際に椎間板ヘルニアが原因での痛みや痺れが出ているかを診断します。

問診

腰痛全般に言えることですが、病院に行った際に第一に行う事が問診です。患者様に症状をお伺いし、椎間板ヘルニアの症状と一致しているかか確認を行います。
内容として、

  • いつから痛むか?
  • 腰のどの場所が痛むか?
  • どのような痛みか?
  • 腰が痛む原因となる事はあるか?
  • どのようなときに痛みが出るか?
  • 腰痛以外に症状は出ていないか?
  • 痛みがなくなるときはあるか?
  • 治療中の病気は腰痛以外にないか?
  • 痛みが出始めの時に比べて今の状況は?
  • 精神的な悩みはないか?

といった内容をお伺いし、原因を推測していくことも重要ですが、患者様とじっくりお話しする事で、患者さんの不安を取り除き、お互いに信頼しあうことが重要になります。

理学的検査(視診・打診・触診)

問診を行ったあとに、実際に患者様の腰まわりに腫れや痣・傷などが存在しないかまたは姿勢・動作を目視し、異常がないかを確認し、視診の後で、患者様に触れる・たたく事で患部の状態を確認します。
診断内容は以下の通りです。

  • 骨が変形または骨折していないか?患部に熱が出ていないか?
  • 患部を押したり、たたくことで痛みが出てこないかまたは増強しないか?
  • 筋肉が衰弱していないか?

神経学的検査

実際に、患者様に前屈や後屈・体を捻るなどをしていただき、痛みが出るかまたは和らぐかを確認します。
確認することで、椎間板ヘルニアの可能性がないかを確認することが可能です。
神経学的検査の代表例として「ラセーグテスト」があり、腰椎が原因での坐骨神経痛ではないか確認します。
患者様に平らなベッドの上であおむけの状態で寝ていただきます。その後両足を伸ばして、膝を曲げずに痛くなる角度まで足を上げていただきます。

その時に確認する項目として

  • どこまで足をあげられるのか?
  • 足を上げたときに痛む箇所はどこか?
  • どのような痛みが出ているか?

があり、左足も同じ内容を確認します。
確認した結果、60度以下の角度で下半身に痛みや痺れが発生するようであれば、腰部椎間板ヘルニアの可能性が強くなります。

X線検査

問診・視診・打診・触診を行った後に、X線検査を行うことがあります。X線検査はレントゲンと言われることが多く、X線検査を行う目的として、骨に損傷やゆがみ・筋肉の炎症を確認します。
但し、妊婦の方は胎児に悪影響を及ぼす可能性がある為、検査を行いません。
他の画像検査に比べて、撮影に時間がかからない為すぐに確認することが可能です。

CT検査

CT検査は撮影した人体の構造を、断面(輪切りにしたようなもの)から確認することが可能です。メリットとしてX線検査では出来なかったあらゆる角度から立体的に撮影が可能になった為、筋肉組織や神経組織といったより詳しいデータを取得することができます。
但し、CT検査を行う場合には、時間がかかる為、通院した当日には、すぐには検査することが難しく、後日、再来院いただくよう案内されるケースが多いです。

MRI検査

MRI検査は放射線を使用せず、磁気を利用して画像データの取得を行います。MRI検査はX線検査やCT検査よりも詳しい情報を得ることが可能と放射線を使用しないことから人体への影響が少ない検査方法と言えます。但し、CTと同じく当日検査を行うことが難しく、予約後に再来院いただく必要があること、MRIを導入している施設が少ないということです。あと、検査を受ける場合に、事前に確認事項があり、磁気を利用して検査する事ことから以下の内容に該当する場合は検査前に外していただくまたは検査自体を受けることができません。

椎間板ヘルニアの治療

椎間板ヘルニアの治療方法はコチラからご確認いただけます。

椎間板ヘルニアのQ&A

腰椎椎間板ヘルニアと診断され、最近、手がしびれるのですが、腰椎椎間板ヘルニアと関係ありますか?
腰椎椎間板ヘルニアとは、椎間板の中に存在する髄核というゲル状の組織が、外に飛び出してしまった状態です。これが腰の骨である腰椎の椎間板で起こったものを腰椎椎間板ヘルニアと呼びます。腰椎椎間板ヘルニアの症状としては、腰痛をはじめ、下半身の痛みやシビレ、足が上手く動かせなくなる運動麻痺、感覚が鈍くなる感覚麻痺などが起こります。
なぜ、腰椎椎間板ヘルニアが起こるのですか?
腰椎椎間板ヘルニアは、多くの場合日々の生活の中で椎間板への負担が積み重なり発症します。長時間の車の運転や中腰での作業、重いものを持つなど、腰に負担のかかりやすい生活を送っている人ほど腰椎疾患を発症しやすいと言えます。ただ、そういった腰に負担のかかることをしない方でも椎間板ヘルニアを発症する人は存在します。また、 喫煙・遺伝なども腰椎椎間板ヘルニアの発症に影響があると言われています。
腰椎椎間板ヘルニアを放置したらどうなりますか?
腰椎椎間板ヘルニアでは、一度飛び出たヘルニアは自然に引っ込むことはないと考えられていましたが、時間が経てば一部のヘルニアは吸収されてなくなったり小さくなったりすることがわかってきました。しかし、すべてのケースで自然に治るとは限りません。腰椎椎間板ヘルニアから慢性の腰痛となり、治りが遅くなることもあり、さらに問題なのは、状態によっては緊急に手術をして神経をゆるめなければ下半身麻痺になってしまう可能性もあります。下半身がおしりあたりまで麻痺してしびれが生じ、排尿を自力でするのも困難になったときにはすぐに医師の診察を受けてください。
腰椎椎間板ヘルニアの箇所により症状はかわりますか?
腰椎は第1から第5まで5つありますが、腰椎椎間板ヘルニアの大部分は、構造上負担のかかりやすい第4腰椎と第5腰椎の間、また第5腰椎と仙骨の間で起こります。同時に2ヵ所以上に発生するヘルニアもありますが、複数のヘルニアが同時に症状を起こしていることは少なく、適切な治療のためには症状を引き起こしている部位を特定することが重要です。MRIなどの精密な画像検査に加え、医師の診断が必要です。
腰椎椎間板ヘルニアに良い寝る姿勢はありますか?
腰椎は、横方向にはしなりやすく、仰向けでは反りやすい特徴があります。そのため、腰をすでに傷めている人は、寝方によって痛みが出やすくなります。寝方による腰痛を軽減するためには、腰をうまく支え、負担が少なくなる寝方がよいでしょう。
腰椎椎間板ヘルニアと喫煙は関係ありますか?
腰椎椎間板ヘルニアの方の喫煙率は明らかに高く、喫煙者は腰痛になりやすいことがわかっています。喫煙することにより、ビタミンCが不足し椎間板の老化を早めます。また、タバコに含まれるニコチンが毛細血管を収縮させ、栄養が充分に行き渡らなくなり椎間板を変性させ、椎間板の水分が奪われスカスカになり、クッション性が薄くなるため、神経を圧迫し腰痛が起こります。
腰椎椎間板ヘルニアで眠れない時の対処法はありますか?
腰椎椎間板ヘルニアで、腰が痛くて眠れない時には、頭の下に敷くまくらのほかに、2種類のまくらを活用します。1つは二の腕の下に敷く「腕まくら」で、2本の腕は肩甲骨を介して腰につながっており、この腕の重みさえ腰への大きな負担になります。普段通り仰向けに寝た状態で、折り畳んだバスタオルを左右の腕の下に置くだけです。ヘルニアで腰痛がひどい時には、この腕の重みさえ腰への大きな負担になります。もうひとつはふくらはぎの下に敷く「足まくら」です。厚さ5cm程のクッションや座布団をふくらはぎの下にはさみます。足まくらを使うことで、腰の反りかえりがゆるみ腰痛が楽になります。

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