腰痛治療に関する記事

フローレンス法(腰椎間接的除圧術)

2017年9月6日 2024年05月17日 投稿者: oj-youtu

フローレンス法とは

フローレンス法はイタリア発祥の欧州や南アメリカを中心に導入されている世界最先端の日帰りでできる脊柱管狭窄症の手術法・治療法です。
フローレンス法はイタリアで2015年に開発されたLobsterスペーサーを使用しています。治療は2016年から始まり、現在はイタリアにだけでなく、スイスやフランスなどのヨーロッパの国々、チリ・メキシコのアメリカの国々、イスラエルと日本に導入されています。

Lobsterスペーサーとは

フローレンス法で使用されるLobsterスペーサーは、チタン製の棘突起間スペーサーです。中央にある胴体と開閉可能な4つの羽根で構成されており、胴体が上下の2つの椎体棘突起の間に挿入されるような設計となっています。スペーサーは挿入後、羽根を開くことで椎体にて固定されます。

フローレンス法は局所麻酔にて、X線透視装置を使用しながら、背中を1~2㎝程度切開し、治療する腰椎の棘突起の間に専用チューブを通してスペーサーを挿入します。スペーサーの羽根を開けることで、狭くなった脊柱管を広げます。
治療後は2~3時間を安静にして、その日のうち退院できます。

フローレンス法のメリットとしては、低侵襲で身体への負担が小さいことをあげられます。
治療後の創は約1~2㎝程度で小さいです。

効果として神経の圧迫を軽減させ、痛みや痺れが改善されます。

外科的手術は通常数週間の入院期間があるのに対して、フローレンス法は入院が必要なく、日帰りで治療を行えます。

  • 腰痛・下肢痛を改善したいが、入院を避けたい
  • 外科的手術をしたくない

という患者様にお勧めの治療です。

もう一つのメリットとしては、治療後の日常生活への復帰が早いです。通常の外科的手術の場合は、安静期間の後にリハビリが始まり、退院後も通院しながらのリハビリが必要ですが、フローレンス法の場合は、治療翌日から日常生活に戻ることができます。
スポーツや重労働に関しても、外科的手術は3ヶ月後から可能ですが、フローレンス法の場合は治療1ヶ月後から可能となります。

フローレンス法の対象

フローレンス法は脊柱管狭窄症や軽度すべり症、椎間関節障害、椎間板性疼痛のある椎間板ヘルニアに適応されています。
脊柱管狭窄症の原因が椎間板や骨による影響が大きい場合は適応外になることもありますので、診察や画像診断で治療適応が判断されます。

フローレンス法の治療効果

フローレンス法の治療により、狭くなっていた脊柱管が拡大され、神経の圧迫が消失して、腰痛や間欠性跛行などの症状の改善が期待できます。

(Luca Jacopo Pavan, et al. Clinical and radiological outcomes following insertion of a novel removable percutaneous interspinous process spacer: an initial experience. Spinal Neuroradiology. 64(9), 2022より)

治療は切開をせず経皮的に行われますので、背骨の安定を図る靭帯(黄色靭帯、棘上靭帯など)が損傷せず温存します。それで、スペーサーのずれを防止し、背骨の不安定性の軽減が期待できます。
治療後の症状改善は、個人差がありますが、治療後2~3ヶ月で症状が軽減していくケースもあれば、すぐに下肢の感覚異常が消える場合もあります。
治療後の合併症に関しては現在報告がなされていません。

フローレンス法のメリット・デメリット

メリット

  • 従来の外科的手術に比べて身体への負担が少ない
  • 脊椎固定術と違って治療後の背中の動きに制限がない
  • 局所麻酔にて、治療時間が30分程度(1箇所)
  • 入院の必要がなく、日帰り治療
  • 傷口が小さい
  • 日常生活は治療翌日から可能
  • 高齢者でも治療を受けられる

デメリット

  • 脊柱管狭窄症の原因によっては適応外になるケースがある
  • 治療費が健康保険適応外(自費診療)
  • 治療後にスペーサーの入れ替えや除去が必要な場合もある

フローレンス法の適応疾患

脊柱管狭窄症

軽~中
すべり症

軽~中
椎間関節障害
椎間板ヘルニア

軽~中

この治療法が有効な疾患